モンシロチョウがふわりと舞い、わさび田に白い可憐な花が咲く２月。この時期のわさびは茎がやわらかく、それを手切りにして三杯酢に漬け込むと、春の味覚『極上三杯酢・わさび茎酢漬け』が出来上がります。口に入れると、甘酸っぱい三杯酢の中で、わさびのピリッとした辛みとシャキッとした歯応えが絶妙にマッチし、あまりの美味しさに箸が止まりません。カメヤでは、この期間だけ数量限定でつくられるこの貴重な商品を、カメヤ直営店とオンラインショップで販売いたします。そこで今回は、この商品のルーツを探るため、製造工程での苦労や味へのこだわりを亀谷泰一社長に聞きました。
伊豆懐かしの味。わさび茎の三杯酢漬け
カメヤがこの商品を作り始めたのは今から40年ほど前。亀谷泰一現社長がまだ大学生の頃のことです。
二十歳になった亀谷青年は、白馬のスキー場でアルバイトをしていました。
そんなとある日、実家から送られてきた仕送りの中に「美味しくできたから」と『極上三杯酢・わさび茎酢漬け』が入っていました。そこで早速職場の仲間たちと、それを肴に一杯はじめました。すると、三杯酢漬けを食べた仲間が口々に「うまいうまい！ お酒（日本酒）のアテにぴったりだ！ 」と言うではありませんか！ 大阪や東京など静岡県出身じゃない人までもが口をそろえて褒めてくれたことに驚きました。
故郷である伊豆の味が、仕事仲間に褒められたことは、亀谷社長にとって思い出深い出来事であり、この体験が、カメヤ食品に入社し社長に就任した後も、この『極上三杯酢・わさび茎酢漬け』を春の定番商品として大切に作りつづけている原点であると、語っていました。
初春でしか味わえない理由
そんなエピソードがあるこの商品ですが、この時期だけしか売られていない理由はなぜなのでしょうか。
ズバリ、その秘密は、わさびの「茎」にあります。
わさびないしわさびの茎は、一年中収穫できますが、やわらかく、細長い茎が採れるのは１月～４月の頭だけ。
それ以降に採った茎はわさびの成長と共に固くなり、筋が多くなります。筋が多い茎は歯応えも悪く、噛んでも噛んでも噛みきれず、噛み溜めができてしまうのです。
そのため『極上三杯酢・わさび茎酢漬け』は、春先の1月～3月に採れるわさびでしか作らない限定商品なのです。
手間を惜しまずつくる、こだわりの製法。
この時期にしか採れない「やわらかく」「細長い」わさびの茎ですが、その後の製造工程でも美味しさを更に引き出すための手間を惜しみません。
採取されたわさびの茎は、清水町にある第２工場で選別と洗浄、カットが行われます。
まずはわさびのイモと呼ばれる実の部分と茎を切り分け、三杯酢漬けに用いる細長い茎とそうでないものを選別し、一束にまとめます。
次にまとめられた茎の束から太い茎がないかチェックし、余分な茎を取り除きます。その後、茎をぎゅっと手でひとまとめにし、３センチ幅で丁寧に切り分けていきます。
３センチ幅に切った後も細すぎたり太すぎたりするものや、汚れているものは別のざるへ移し、綺麗な形のものだけを残します。その後、残った綺麗な形の茎を三杯酢漬け用のざるに入れ、水洗いをして平成台工場へ届けます。こうして選別された茎は選別する前と比べて、なんと1/10の量まで厳選されるのです。
味の決め手は瓶の中。辛味を保たせる秘訣とは。
平成台工場へ運ばれてきたわさびの茎は、職人の手作業で塩モミを行い、次に冷水で塩を洗い流し、砂糖をかけてなじませます。その後、熱湯の中に茎を入れ湯がいてザルにあげ、荒熱を取ります。そして茎がまだ温かいうちに瓶の中に茎を入れ、三杯酢を注ぎます。因みに三杯酢とは、酢、正油、砂糖（みりん）を１：１：１の割合で合わせるのでこの名がついたと言われています。
以前は三杯酢に茎を入れてから瓶に詰めていたのですが、その製法ですと時間がたつとわさびの辛味が抜け、三杯酢の甘みが強く出てしまいました。そこでその後、瓶の中で味を決める製法に変え、三杯酢も砂糖の分量を減らし、酢を強めに味の調子を整えました。
今では、瓶の中でわさび茎の辛味と三杯酢の甘酸っぱさが絶妙に混ざり合い、ちょうどいい辛味と酸味に仕上がり、極上の味になりました。
しみじみ感じる旨さ『極上三杯酢・わさび茎酢漬け』
『極上三杯酢・わさび茎酢漬け』は、口に入れると、甘酸っぱい三杯酢の中で、わさびのピリッとした辛みとシャキッとした歯応えが絶妙にマッチし、あまりの美味しさに箸が止まりません。わさび茎は静岡県産のみを使用。採れたてのわさびを新鮮なうちに加工することで、新芽の柔らかさと風味をそのまま生かしています。
晩酌のおつまみや白ごはんのお供にぴったりです。
ぜひ、季節限定の特別な味覚をお楽しみください。
筆者：わび
