日本の食文化に深く根付いた香辛料「わさび」。
南北に長い日本列島では、育つ地域の自然環境によって、わさびの特徴に違いがあります。
今回は、わさびの根茎(すりおろす本体部分)の出荷量が多い都道府県のうち、1位~3位までを《後編》としてご紹介します。
👑3位 岩手県
第3位は岩手県で、出荷量は18.5tと、東北一の出荷量を誇ります。
その内、「畑わさび」の出荷量だけを見れば10.4tと日本一で、全国シェアの50%強を占めています。
県内で有名なわさびの産地といえば、遠野市宮守町と岩泉町です。
遠野市宮守町(旧宮守村)は、「水わさび」の産地で、湧水が豊富で且つ年間を通して水温が一定なため、水わさびの栽培に適しています。栽培方式に静岡県伊豆の畳石式わさび田を参考にしており、火山灰層で自然にろ過された岩手山の伏流水で育てられた「雫石わさび」は、香り高く辛味が強いわさびとして有名です。
「畑わさび」の産地である岩泉町は、町の面積の9割を森林が占めるため、冷涼な山間部の畑で育てるわさびの生産が盛んです。
👑2位 長野県
第2位は長野県で「水わさび」の出荷量は95.4t。「水わさび」と「畑わさび」の合計は99tと、3位の岩手県を5倍以上の出荷量を誇ります。県内で最も有名なわさびの産地は安曇野市です。
安曇野の「水わさび」は、平地式水耕栽培という独自の方式でつくられています。
北アルプスの雪解け水が地下水となり、これが砂地から湧き出てくるところにわさび田をつくり、苗を植え育てます。冷涼な気候と新鮮な湧き水という最適な環境が、安曇野のわさびづくりを支えているのです。
安曇野のわさびを添えた信州そばが、とても美味しいのは言うまでもありません。
👑1位 静岡県
そして、栄えある第一位は静岡県です。
出荷量はなんと222.8tと圧倒的です。そのほとんどは「水わさび」の根茎が占めており、わさびの出荷額でも日本一です。
県内で有名なわさびの産地は、静岡市有東木、伊豆地方、北駿地域(御殿場、小山町)です。
中でも有東木は「わさび栽培発祥の地」と云われており、わさび栽培の一大聖地です。
静岡のわさびは江戸時代、徳川家康公に門外不出の品とされ、大切にされてきました。
南アルプスを水源とする有東木のわさび、天城山に降る雨の恵みで育つ伊豆のわさび、富士山の湧水が豊富な御殿場や小山町のわさびと、静岡県は「水わさび」づくりに最適な環境を有しているのです。
また静岡県の生産者は、「畳石式」「地沢式」「北駿式」と呼ばれる様々な栽培方式を開発し、全国に広めました。
「畳石式」は、伊豆の石工技術者が開発した栽培方式で、不純物の濾過、水温の安定、酸素や栄養分の供給に優れ、「水わさび」づくりに最適な方式と云われています。
「地沢式」は、最も古いわさびの栽培方法とされ、今でも急斜面で活用されています。
「北駿式」は、砂利や石の代わりに富士山の噴火物を利用する、御殿場市、小山町を中心とした北駿地域で確立された栽培方式です。
元祖「畳石式」で栽培された「伊豆のわさび」、とりわけ最高級品である真妻種のわさびは、その香り、風味、まろやかな辛味と、筆舌に尽くし難い味わいで、カメヤの直営わさび沢でも栽培されています。
カメヤでは、静岡県産、伊豆産のわさびにこだわった商品づくりに努めています。
いかがだったでしょうか?
南北に長い日本列島には、北は北海道から南は島根県まで、わさびの名産地があるのでした。
地域ごとに特徴の違う「わさび」たち。
皆様が旅行に出かける際は、是非その地域のわさびを召し上がっていただけたら嬉しいです。わさびを通して、日本の食の奥深さを味わってみてはいかがでしょうか。