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小料理屋のカウンターで舌鼓を打った 古き良き昭和の味「しょうが粕漬」

お酒には人を感傷的にさせる魔力があり、そんな時に思い出す懐かしい味があります。「しょうが粕漬」は、そんな懐かしい昭和の味を、現在に蘇らせたカメヤ食品自慢の逸品です。材料は新生姜と酒粕、砂糖、塩、発酵調味料だけ。シンプルですが生姜の辛みが酒粕の甘さで引き立つ奥行きのある味わい、日本酒との相性は抜群で、合わせて口に含めば思わずため息が漏れます。
今回は、この古き良き昭和の味「しょうが粕漬」をご紹介します。

「しょうが粕漬」の誕生秘話

恋は、遠い日の花火ではない。
これは今から30年ほど前、某有名ウヰスキーメーカーのCMに流れていたコピーです。
当時このCMは、長塚京三さん演じる哀愁に満ちた上司が、天真爛漫な部下の一言に心をかき乱される様子が秀逸で、世のお父さん達をドキドキさせたものです。
私が日本酒の肴に「しょうが粕漬」を初めて口にしたとき、なんとも懐かしい昭和の味、ノスタルジックな気分がこみ上げ、冒頭のコピーを思い出したのでした。
今回この商品を取り上げるにあたり亀谷社長にお話をお伺いすると、この 「しょうが粕漬」は、今から四、五十年前に現会長が小料理屋で舌鼓を打った味を再現したものだとお聞きし、なるほど、それで食べるとなんとも懐かしい気持ちになるのかと、合点がいきました。

現会長は、当時カメヤ食品の社長として、商品開発や製造、販売と、日夜忙しい日々を過ごす中で、仕事帰りに行きつけの小料理屋で一杯やり、一日の疲れを癒したそうです。
その時に板前の主人が出してくれた生姜の粕漬が今でも忘れられず、その味を何とか再現して、多くの方に食べてもらいたいと思い立ち、その思いを受け止めた現工場長が、試行錯誤の末に商品化することに成功したとのことでした。

カメヤの生姜へのこだわり

そもそもこの「しょうが粕漬」が商品化された背景として、現会長が大の生姜好きであるという点が挙げられます。(ワサビが売りの会社の会長が、片や大の生姜好きというのが何とも面白いではありませんか)
そんな背景もあり、今までカメヤ食品では生姜の漬物づくりに力を入れてきました。
これまでに作ってきた生姜商品は、「箱根西麓の紫蘇生姜」「ぶっかけ生姜」「しょうがのガリ」「しょうがの味噌漬」「刻みしょうがの醤油漬」の5つ。そこに新たに加わったのが、この「しょうが粕漬」です。
使用している生姜は当初、有名な産地である高知や九州地方のものを買い付けていたのですが、せっかくなら地元の伊豆や箱根で採れた生姜を使って商品を作りたいとの思いが募り、10年ほど前から地元契約農家と一緒に、箱根西麓産の生姜を作り始めました。

ところが生姜をつくり始めると一筋縄にはいかず、その難しさにとても苦労されたそうです。 生姜づくりは、4月下旬ごろに植え付けをはじめ、6月~8月に葉生姜を、10月~11月頃になれば根生姜が収穫できます。しかし、生姜は翌年も同じ畑に植え付けると、連作障害といって土の中の栄養素である五要素 (窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム)が偏り、生育不良になってしまいます。そこで畑を変えながら、4~5年の間隔を空けて栽培する必要があるのだそうです。また、その年によって生姜の収穫量も増減するため、生姜づくりはとても難しいといわれています。
このように難しい生姜の栽培ですが、カメヤの契約農家が育てている箱根産の生姜は、高知や九州地方のものと違い、生姜特有の辛味、風味が強く、漬物やシロップ漬けにしても生姜本来の風味が損なわれにくいため、たいへん美味しい生姜の漬物が出来上がります。
これこそが、カメヤ食品が生姜を栽培から手掛ける理由であり、他にはない美味しい生姜商品をつくることができる秘密なのです。

こだわりの会長レシピで作る「しょうが粕漬」

それではここから、生姜の粕漬ができるまでの工程をみていきましょう。
まずは契約農家から仕入れた生姜を一つ一つ手作業で根と茎に分け、生姜の風味が飛ばないよう、手早く作業を行います。その後、洗浄機で細かい汚れを落としていきます。

生姜の根と茎を分ける作業
機械で細かい汚れを落とす

水洗いが終わった生姜は、再度目視で無駄な部分を確認して切り落とし、残った根茎の部分を、繊維に沿って3ミリ幅で切り分けていきます。

3ミリ幅で生姜を切りわける様子

その後、塩水に晒し、サイズが大きいものと小さいものに分け、熱湯で湯がきます。
そして湯がいた生姜を冷却した後に水気を切り、いよいよ酒粕に漬け込みます。 その際、サイズを揃えて漬け込むことで、漬け込み度合を均一にすることができます。

酒粕は、わさび漬けに使うものとは別の、独自に熟成させたものを使用。
わさび漬けの酒粕とは違い色も濃く、味噌のような芳醇な香りが漂います。

生姜の粕漬けに使用される熟成粕

職人がちょうどよい塩梅に酒粕を混ぜ合わせる

そして酒粕と生姜を職人が丁寧に混ぜ合わせた後、数日間寝かし、最後に袋詰めにして出荷します。

ザクっと噛めば、思わずため息がでる「しょうが粕漬」

この商品の魅力は、何といっても質の高い素材と酒粕などの絶妙な配合にあります。素材の箱根西麓産生姜は、ざっくりとした食感と爽やかな芳香、そして箱根西麓産特有の辛味が特徴です。また酒粕には静岡県の銘酒花の舞を使用し、そこにカメヤの経験豊富な漬物職人が塩、砂糖、発酵調味料を絶妙に配合し、丁寧に熟成させてから漬け込むことで、最高な味に仕上がります。

そんな「しょうが粕漬」の気になるお味は、鼻を近づければ、熟成させた酒粕の芳醇な香りの中から、生姜の爽やかな香りが顔をのぞかせます。
そして、とろとろとした酒粕と一緒に生姜をザクっと噛めば、酒粕の甘みと旨味、生姜の辛味とほろ苦さが渾然一体となって口いっぱいに広がり、思わずため息がでる至福の瞬間に時が止まります。
これぞ懐かしの昭和の味わい、酒呑みにはたまりません。

また日本酒のアテとしてだけでなく、お味噌汁と一緒に食べると味噌が引き立ち、旨みのシンフォニーがこころの中に響き渡ります。
さて、私のお気に入りの食べ方は、クラッカーにクリームチーズを塗り、その上に 「しょうが粕漬」をのせるというもの。
生姜の辛味が和らぎ、爽やかな香りとクリームチーズが絶妙に溶け合い、紅茶に合わせれば、それはもう、至高の一品と申し上げても差し支えないでしょう。
是非、お試しあれ!

筆者:さび

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